製缶とは

製缶とは?
製缶とは、製缶板金加工の略称になり、穴加工や曲げ加工,溶接などの工程を組み合わせることで図面で求められている形状に成形していきます。
板金加工と類似していますが、より複雑で大型物の製作ができます。
製缶板金加工と板金加工の違いを一言でいうと「板厚」です。
大型製缶物や産業機械などの板厚が薄ければ耐久性や安全性といった面で必ず欠陥が出てきます。
製缶板金加工の例としましては、株式会社北海鉄工所さんの鉄人28号や沿岸部工業地帯にあるクレーン、洗車機フレーム、工場の設備ラインなど私たちの社会に必要なものの根幹が造られています。
板金加工の例としては、オフィスにあるスチール家具や看板、自動車部品など私たちの日常生活でよく目にする物も多く作られています。

製缶工程
図面作製→鋼材調達→鋼材加工→仮付け溶接→本溶接→歪取り
①図面作製
エンドユーザーの要望に応えられる仕様の設計図を基に各種部品ごとに分けて製図していきます。
製図には誰が描いても読み手が同じように解釈できる世界共通ルールがあります。
それがISO(国際標準化機構)の製図であり、ISOの規格に準する日本の国家規格JIS(日本産業規格)の製図です。
図面があることで製缶作業のスタートラインに立つことができます。

②材料調達
図面に指示された鋼材を鋼材屋に発注します。
金属の種類としては、SSやSUS,アルミ,スチールなど様々あります。
それぞれの企業によって自社の強みが違うため扱う材料によって個性が出てくると思います。

③鋼材加工
鋼材の寸法切りや穴あけ、曲げ加工やレーザー加工など鋼材に加工を施し仮付けする前の準備をしていきます。
最適な加工方法を考え、レーザ加工機やプレス機,ボール盤などの機械を選定し加工をしていきます。
機械なのでケガや事故がないように安全第一で作業をしていきます。

④仮付け溶接
職人技の見せ所です!
図面を見て自分の最適手順で仮付けを行い、実物にしていきます。
溶接時やひずみのことなど後作業のことを考えるのが重要になってきます。

⑤本溶接
溶接をしていきます。
板厚に応じた電流,電圧にすることで、溶接がやりやすくきれいに仕上がります。
ポイントは音を聞き、溶接部のビードで電圧の調整をしていきます。

⑥歪取り
溶接した部分は縮もうとするので歪ます。
ハンマーで叩いたり、熱を加えたりすることで歪をとることができます。
どれくらい叩けばいいのか、熱を加えればいいのかも職人の勘にが頼りになってきます。

 

製缶職人の現状
高度経済成長期には、日本経済の成長とともに多くの仕事が世の中にありました。
1970年、大阪万国国際博覧会開催の年を皮切りに製造業を含む第二次産業は縮小していくことになり、第二次産業の就職者比率は、1970年34%から2015年には25%まで減少しました。
近年では製缶職人も減少しており、貴重な存在になってきており、自分の身に着けたスキルで高収入が狙える業界に変化してきています。
製造業の3Kであるきつい、汚い、危険は2020年代になっても残っていますが、3S活動や安全講習など現状を少しでも良くしようとする企業は増えていると感じています。
製造業のおもしろさを後世に伝えていける、そんな存在になれることを夢みています。

 

引用先 大正大学地域構想研究所 2023/10/17 https://chikouken.org/report/report_cat01/9225/